プロダクション

プロデューサー久松真菜さんに聞く
「広告業界がキラキラするために今必要なこと」

垣根を越えると、何かが変わるかもしれない

―― はじめに自己紹介をお願いします。

久松広告制作会社のシースリーフィルム代表の
久松真菜と申します。

2006年にAOI Pro.に入社して、
2011年にアシスタントプロデューサーを経て、
2012年にプロデューサーになり、
2024年にシースリーフィルムの代表に就任し、
今年で代表3年目となります。


現在もプロデューサーとして現場に立っていて、
家庭では2歳になる子供の母としても
奮闘する日々です。

―― プロデューサーとして、
どんなところにやりがいを感じてますか?

久松こんなにも楽しい仕事でお給料を頂いている
っていうことが本当にありがたいなと思っています!

好きな映像を、大好きな人たちと一緒に作り上げる、
すべてのプロセスが私は好きです。

自分らしさを何一つ欠けることなく
存分に出せる職業だなと思っているので、
非常にやりがいのある、
生きる力になっていると感じる、
ありがたい仕事だなと思っています。

プロデューサーは、まず人と人をつないで、
人と映像をつないでいく、
「つなぐ」役割を担っているのだと思っています。


クライアントやエージェンシーの方とつながって、
お仕事をいただき、エージェンシーの方へ
スタッフの皆様をつなげて、作品を一緒に仕上げ、
視聴者の方につなげていく。

この人と人との繋がりを大切に思いながら、
それを喜びとしてお仕事してまいりました。


「この方とこの方をつなげたい」と思って
ご紹介をすることがあります。
「この方とつないでくれて良かったです」と
感謝されることもあり、
なんて素敵な仕事なんだろうなと思うと共に、
ありがたいお仕事だなと改めて感じています。

―― 映像制作の過程で気をつけてることとか、
自分の信念というか、こだわりみたいなものは
ありますか?

久松「愛を持ってつなげる」です!
仕事をする上では、たくさんの方々と関わりますが、
時には意見が合わずにすれ違うこともあります…

そのような時でも、相手に愛を持って
誠実に接することは、大切にしています!

嘘をつかずに、仕事相手や作品、
自分自身に向き合うことが、プロデューサーとして
一番大事なのだと思っています。

―― 昔と今は働き方もかなり変わったと
思いますけど、
この業界の、今の課題、
問題みたいなことってどのように
考えてますか?

久松うーん、難しい質問ですね…
コミュニケーションが減っているのは
課題だと感じます。

コロナ禍が大きなターニングポイントで、
以前は対面でやっていたことが、
対面ではなくなり、
以前であれば
対面だったことで得られたチャンスを
失っている可能性があると思うのです。

一方で、リモートが当たり前になったことで、
新たなチャンスが生まれてもいると思います。
私自身としても、リモートワークが
普及していなかったら、出産・育児などの
タイミングに影響したかもしれないと思います。


良いことも悪いこともあるのですが、
コミュニケーションの機会自体は減っていると
感じるので、増やしていきたいなと考えております!

―― 業界全体の課題として思っていることは
あります?

久松女性の活躍だと思います!
男性女性関係なく、家族がいる方、シングルの方、
育児や介護をしている方、
様々なライフスタイルを持つ全ての方が
平等に活躍できるような働き方や
業界のあり方についてはずっと考えています。

―― 女性がキャリアを続けにくいという実情は
まだあるんじゃないかと思うんだけど、
なぜそういうことがこの業界に起きる?

久松私がPMをしていた時よりは
かなり改善されているとは思います。
深夜の打ち合わせや作業はかなり減りましたし、
コンテ作業やVコンも遠隔で行えるようになりました。

ですが、まだまだ業界は他業界に比べると、
一歩遅れているとも感じます。

―― どういうところが?

久松他業界では夜遅くまで
長時間仕事をするようなことは
なくなってきたと思います。

しかし、この業界では、撮影となると
様々な条件がありますし、
いい作品を作るために粘ることも時にはあるので、

夜の撮影を完全になくすことは難しいです。

そこで、例えばですが、
スタッフを時間交代制にして
そのような状況になってもするなど、
働き方や仕組みを変えていくことを
考える必要があるのではないかと思うのです。

―― 時間の制約があることが問題?

久松時間の制約があることで、自分や仕事、
家族のことをじっくりと考える時間が取れないのが、
現状の私自身の悩みですし、
業界で働く方にも多いのではないかなと思います。

―― そんな中で、一児の母でもありますけど
現役のプロデューサーと社長業を
こなすというのは、
どういうところに苦労があります?

久松私はマイナスをプラスに考えるタイプの
人間なのですが、それでもスーパー難しいです!笑

会食にも行きにくくなりましたね。
今は夜の会食の機会を平日2回として、
土日は家族で過ごすことに決めています。

毎日会食に行っていた私にとっては、
その週に2回の会食が、とても貴重な機会と
なっているのです。
その機会を大事にして濃密な時間を過ごすと
決めています!

そして、今は育児とプロデューサー業と
社長業の3つで日々バタバタしていますが、
今後自分を一歩先へ進めるための
三本の矢になるのかなとも考えています。


「大変でしょ?」と言われることも多いのですが、
周りの人に支えられて
楽しくやらせてもらっているという
感覚の方が強いです!
本当です!

―― この業界に対して求めることあります?

久松働き方の自由度を上げる必要があると思っています。
育児・介護もそうですし、趣味の時間など、
業界で働く人のライフワークバランスのために
できることを考えることが大切だと思うのです。


例えば、月曜日のプレゼン。
「月曜のプレゼンは避けたいです」ということを
お伝えしていても、まだまだあるのは、
「誰かがどうにかしてくれる」という思いが
あるのかもしれません。

撮影も月曜日だと、
アングルチェックが土日になります。
個人としても、土日に子供を預ける
っていうのは難しいですし、
様々な立場のスタッフも土日は
プライベートな時間として
大切に過ごして欲しいと思っています。

働く人同士がお互いのことを考えれば、
改善できるところはもっとあると思っています。
すぐには難しいとは思いますが、
少しずつでも変わっていけたらなと思っています!

―― 業界に入ってくる人とか、業界に入りたいと
思うために魅力的である必要があると
思うんですけど。

久松はい!

―― 楽しそうであるとか、魅力的であるとか、
そのために、この業界が必要なことって
何ですか?

久松難しい質問ですねー…

世の中で名前が知られる
CMプロデューサーを輩出するのは
業界を知ってもらう方法の1つだと思います。

この業界に入るときに
「CMプロデューサーって何?」って思っていたので、
仕事への理解度が低くて、
業界に入るのが少し怖かったです。

テレビや映画のプロデューサーには
有名な方もいらっしゃいますが、
CMのプロデューサーで
一般に名が知られている人はいないと思うのです。

業界をポジティブに捉えてもらうためにも
ヒーローがいてもいいのにと思っています。


テレビや映画業界には
有名なプロデューサーがいるから、
どんな業界なのかがイメージがわきやすい
というのはあると思うのです。


プロデューサーは楽しい仕事だと思うのですけど、
それをどう伝えるかがすごく難しい。
時代が変わって、広告のやり方が、
CMだけではなくなっていると感じます。
広告業界がもっと幅広い領域を
扱うようになる可能性はあると思いますし、
そうなればいいなと思っています。

去年の大阪・関西万博に行った時、
各国のパビリオンそれぞれが、建造物も含めて、
とても面白くて、自分たちの国の
広告をしているのだと思ったのです。

広告の領域の広がりを感じました。

さらに広告は面白くなる可能性がある。
私たちはもっと勉強をしないと提案ができない
とも思いました。

たくさん勉強をして提案をして、
「広告は面白い」と思ってくれる人が増えれば、
業界の未来も希望があるものになると感じました。

―― プロダクションの若い人に求めることって
どういうところがあります?

久松シースリーフィルムに限っていうと、
若手社員はお願いをしたことを熱心に
一生懸命に取り組む人が多いと感じます。

それはとても素晴らしいことですが、
時には一生懸命さから思い詰めてしまう人もいます。


あくまで自分の経験なのですが、
辛いことがあっても、あとで振り返ってみると、
意外とこの先のヒントになって
道が開けることが多かったのです。
だから、思い詰めすぎずに、
視野を広げて仕事を楽しむことを
心がけてほしいです。

あとは、ダサいと思うこともやってみる。
若い方には、声を出していった方がいい現場で
声を出すことをダサいと思ったりする人も
いたりするのです。
自分がダサいと思ってることって、
周りからは意外に大したことでは
ないかもしれません。

自分の殻を破るために
やってみてもいいと思うのです!

―― もう一回、ちょっとその魅力の話を
聞きたいんだけど?
広告業界が魅力的に見えるために
やっぱり必要なことって他にありますか?

久松垣根を越えることでしょうか!

クライアントだからとか、
エージェンシーだからとか、制作会社だから、
スタッフだからみたいなところも垣根を越えて、
打ち上げでもいいですし、
意見交換したりでもいいです。


それが仕事での可能性が広がり、
働く魅力につながっていくのではないかと思います!


殻に閉じこもるのではなく、
一回ぶち壊してみる力が業界には
足りないのかもしれないですね。

出る杭を打つのではなく、
お互いのとんがっている部分を賞賛し合えるような
業界になったら、もしかしたら変わるかも
しれないなと思います!!!

―― いいですね。

久松先日、クライアントやエージェンシーや
スタッフも含めて全員で打ち上げしたのですが、
お互いに顔が見える場があるといいと
改めて感じました。

どの人がどういう立場で何をやっているか
ということが見えると、この先もよりそれぞれの仕事に
身が入ると思うのです。

広告業界はお互いが見えにくい業界なので、
垣根を越える機会が増えていくと、
もしかしたら何かが変わるかもしれないと
思っています。

―― まだまだ伸び代のある業界ということですね!

久松 真菜(ひさまつ まな)

株式会社シースリーフィルム代表取締役社長 / プロデューサー
1983年生まれ。2006年 葵プロモーション(現AOI Pro.)入社、2012年にプロデューサーに昇格し、人の心を動かす映像作りのためクラフトへの情熱を注ぎ続け、大塚製薬、日本郵便、資生堂、エーザイ、森永乳業、ソフトバンクなど数々の企業のCMを手がけてきた。
2024年1月、AOI Pro.グループの映像制作会社・シースリーフィルム代表取締役社長に就任。国内のグループ会社において、初の女性代表となる。
ADFEST グランプリ、ACC賞 ゴールド、Clio Award シルバー、Spikes Asia シルバー、JAC AWARD リマーカブル・プロデューサー・オブ・ザ・イヤーなど、国内外で多数受賞。

  • 聞き手/株式会社 AOI Pro.
    プロデューサー
    山田 博之
  • 記事公開日/2026.2.2
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